研究成果
Reaserch result
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スピン流が機械的な動力を運ぶことを実証電子は電気的な性質に加えてスピンと呼ばれる自転的な性質を持っています。そのスピンの流れであるスピン流は電流と同じように情報を伝送する担い手になれると考えられており、例えば、強磁性体(磁石)にスピン流を流し込むことで磁石の向きを反転することができるため、次世代メモリーとして注目されている、磁気ランダムアクセスメモリー(MRAM)の基本技術などに使われています。 一方で、スピンは自転的な性質ですから、ミクロな回転と見なすこともできます。この回転を利用し、物体の回転運動をはじめとするマクロな機械運動をス...
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超伝導体を利用した新たな環境発電機能を実証環境発電とは、身の回りにある様々な“揺らぎ”から、使える電力を取り出す技術です。例えば、熱エネルギーという揺らぎを電力に変換する熱電変換素子、マイクロ波を電流へと変換するレクテナなどがあります。このような揺らぐエネルギーから電力を得るためには、一般に整流効果(注1)と呼ばれる現象が必要となります。 私たちの身近で使われているものの中で、整流効果を利用している代表的なものといえば、ダイオードが挙げられるでしょう。電子回路などに使われるダイオードは、n型半導体とp型半導体を結合させて作りま...
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核スピン由来のスピン流を世界で初めて検出スピントロニクスは、電子が持つ電荷だけでなく、電子が持つスピンをも利用して、情報の処理・伝達・保存を行う技術であり、電子スピンの伝搬を担うスピン流は最も重要な物理量です。しかし、物質中にはこのスピンを持った粒子が電子以外にもあります。それは原子核です。 原子核のスピンは医療現場での大型検査機器などに使われる磁気共鳴イメージング法(MRI)に利用されています。しかし、核のスピンを調べるには非常に大きな磁場が必要であり、電子機器など身近なものではこれまで全く利用されていません。 一方で、核スピンは、電...
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スピンペルチェ効果の温度分布可視化に成功スピンペルチェ効果による物質中の温度変化を可視化することに世界で初めて成功しました。熱は物質中を伝播し拡散していく、というのが従来の熱現象ですが、今回スピンペルチェ効果によって生じる温度変化は周囲には広がらず、局所的に生じるということが明らかにしました。 物質中には様々な流れが存在します。電気の流れが電流、熱の流れが熱流、そして磁気の流れがスピン流です。これらの流れは相互に作用し、変換することができます。(図1)スピンペルチェ効果とは、スピン流注1)によって温度変化を引き起こす現象であり、磁性体...
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スピンゼーベック効果の高効率化に新指針スピンゼーベック効果はスピン流注1)を介し、熱を電気エネルギーに変換する現象であり、それを発現する素子の構造が単純なことから、次世代の熱電変換法として期待されています。従来、スピンゼーベック効果の性能向上は、磁性体中のスピン流の担い手であるスピン波・マグノン注2)の性質向上が主な研究対象で、素子を多層化することなどによってスピン波の伝搬距離をのばすことで、スピンゼーベック効果の出力向上に貢献してきました。 しかし新たな研究指針として、物質中の音波がスピンゼーベック効果の出力向上に寄与する可能性を...
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新たなスピン流の担い手を発見スピン流とは物質中の磁気の流れことで、電流に似た働きをすることが確認されています。従来スピン流はその性質から金属や磁石を中心に研究がおこなわれてきました。しかし今回、通常の金属や磁石の状態とは異なる、「スピン液体」と呼ばれる状態において、従来とは全く違うタイプのスピン流が存在することが明らかとなりました。新しいスピン流は、「スピノン」と呼ばれる特殊な状態で運ばれており、理論的には従来の限界を打ち破るほど長距離でスピン流を伝えることができます。また、スピン液体状態を利用すれば、その性質から原子...